全国にもCTを設置している耳鼻科診療所は数カ所ではないでしょうか。
しかし、当院では、検査・診断の有用性、患者さまの利便性から、院内にコーンビームCTを導入することにいたしました。
1986年にヘリカルCT(ヘリカルスキャン)が開発され、我々の世代の医師は誰もが、レントゲンと比較してその診断力の高さに驚愕していました。
CTの優れた特徴は硬い骨と柔らかい粘膜を鮮明に描出することにあります。
鼻はいくつかの骨と軟骨で形成され、骨で囲まれた副鼻腔という空洞に交通を持っています。また耳は鼓室や乳突洞といったやはり骨で囲まれた空洞から形成され、音を伝えるしくみも耳小骨という小さな3つの骨の連鎖で成り立っています。
このように、鼻と耳は骨と粘膜で囲まれた空洞で形成されており、鼻と耳の病気の多くが骨または粘膜の状態が原因で起こります。
骨と粘膜を数㎜単位で鮮明に描出するCTは耳と鼻の病気に対しては極めて有用であり、診断においていかに絶大な威力を発揮するかご理解頂けると思います。
CTが設置されている病院でCT検査を受ける場合、ほとんどが予約制です。しかも、診断をするまで3回も通院します。というのも、まずCT検査の必要性の確認と予約のために、そしてCT撮影のために、最後にCT検査の結果を聞くために、それぞれ来院する必要があるのです。
そうすると患者様にとって時間的にも経済的にも非常に不利益ですし診断・治療の遅れにもつながりかねません。
自院にCTがあれば、検査が必要な場合、受診された当日に、撮影、診断、説明が待ち時間なくでき、患者様にとってもメリットが大きく、満足が得られるのではないかと考え、コーンビームCTを導入いたしました。
コーンビームCTとは、円錐形のX線ビーム(コーンビーム)を照射しながら機械が回転して撮影を行い、撮影した画像データをコンピューターを用いて3D 立体画像を作成します。 厚さ0.05㎜での断層(スライス)撮影が可能なため、その精密な立体画像から様々な耳鼻科領域の病気の診断精度を飛躍的に向上させます。
このようにコーンビームCTは非常に安全性が高く、患者様がご自身の状態を理解していただくためにも重要な検査であることに間違いはありませんが、検査費用も3割負担で約3000円程度と決して安価ではありません。
もちろん医師が診断や治療に必要と判断する場合のみにお勧めいたします(ちなみに当院を受診される患者様でCTが必要と判断して検査した方の割合は100人に1人程度です。)が、最終的にはご本人のご判断やご希望を優先いたします。
単純レントゲンで全体的な病変が把握出来ればそれで充分な場合は原則としてお勧めいたしません。
耳鼻科の代表的な病気として知られる慢性副鼻腔炎や慢性中耳炎という病気は、慢性という言葉がついているのでお判りのように、長い間病気に悩まされ、また最新の治療を施行してもある程度の治療期間がかかることも少なくありません。
薬で治るのか、治療で病気が良くなっているのか、もしくは手術が必要なのかなど、多くの患者様は不安になられます。
CT検査では病気がどこの場所にどの程度の状態であるかが、目で見えてはっきりわかるため、最良の治療への力強い手助けとなりますし、またご自身の病気への理解が深まり、治療への意欲が上がり安心につながることも多いのが現状で、患者様にとって大きなメリットがある検査です。